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多くの人がやる。ただ、受験勉強で疲れているのか下校時の中・高生は別だが。
比較的空いている車内後方に座ると近くに緊急時脱出用の安全門があるが、説明らしきものをよく見ると「緊急時にはこのガラス窓を撃破して外へ出てください。」と書いてあったりする。座席前には「シートベルトをお締めください」という貼り紙があったりもするが、締めるベルトはない。
車内は全て禁煙だ。運転席の上の禁煙マークは車内からよく見える。だが運転席ではたとえエアコンが回っていても窓を開けて吸っている。運将は別だ。長くても数十分乗るだけの者とほとんど一日中乗っている者とはちがうということだろう。誰も文句は言わない。停留所でもないのにバスを停めた運将に頼まれビンロウを買いに道端の店まで走った客もいる。
冬の雨の日は寒い。気温はさほど低くはないが、東京のように凛とした寒さではなく、しとしと雨で湿気が多くイジイジした寒さだ。台湾人は暖房が嫌いだが、バスの中でも例外ではない。湿気でフロントガラスが曇るためエアコン(といってもクーラー)を回し、運将は革ジャンに野球帽でフル装備している。客は皆寒いはずだがこれも誰も文句は言わない。
下車する際は停留所についてからのんびり席を立っていたのでは間に合わない。自分が降りる停留所の幾つか前になると、席から席へと飛び石伝いに段々前へ移っていく。手前の停留所を発車したらもう席を立つ。引き紐や押しボタンもあるが、下車の意思を運将に伝えるためには運転席横に立って料金を入れるのが一番確かだし、地元っぽい。あとは、両手足で突っ張って体を支えステップの上でじっと待つ。隙間をあけると後から来た客が大抵その間に入ってくる。割り込みかとも思うが、そもそも並んでいるという意識はないらしい。下車客が自分一人なら完全に停車していなくてもドアが開けば速やかに降りる。これが運将とのいいタイミングだ。「バスが停まるまでは降りないでください」と貼り紙があるが、もたもたしていると「早くしろ」となる。
日本人学校のある街やかつての歓楽街で今は温泉地となった街は台北北郊にある。この辺りへ出かけるときにバスに乗ると「○×路線バスの旅」みたいな感じがして、最近ちょっと気に入っている。
 

 

 

 

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